犬と牛の日々-牧牛稜縦走 第二日目
第一日目は、行程も短く、天気もまあまあだったが、昨夜の天気予報では、夜半から午前中にかけてに前線が通過し、午後、天気が回復してくるとの事だった。

当初の予定では、今日二日目は、雌牛沢(Cow Creek)沿いの登山道を辿って、雌牛越え(Cow Saddle)を越え、反対側の裂け目谷(Cleft Creek)を下って、ルアマハンガ川(Ruamahanga River)に出る。そして、右岸沿いに上流の雄叫び牡鹿山荘(Roaring Stag Lodge)を目指し、時間的に余裕があれば、牧牛稜(Cattle Ridge)北端の牧牛稜小屋(Cattle Ridge Hut)まで登る。明日三日目は、牧牛稜をワインガワ峰(Waigawa peak)の肩の分岐点まで縦走して、そこから雌牛越えに下り、雌牛沢小屋に戻る、ということになっていた。にほんブログ村 アウトドアブログへ





ところが、前線は夜の内に早めに通過し、朝起きたときは、雲がまだ低くかかっているものの、穏やかで行動条件は徐々に良くなるように見えた。昨夜の雨で、川や沢も増水気味だろう、予定のルートは渡渉もあるし、天気が回復するなら、今日のうちに森林限界上の牧牛稜縦走を済ませたほうが良いのではないか、とKさんに話したが、Kさんは、ルート変更にはあまり乗り気ではないようだ。牧牛稜は、平らで広く、視界が効かない事で悪名が高い。以前、霧の中、牧牛稜を縦走しようとしてルートが見つからず、苦労したことがあるKさんは、まだ低く垂れ込めている雲の様子が気に入らないようだ。e0056912_9505861.jpg

とりあえず出発。橋を渡り、登山道を辿って、雌牛沢登りの起点に着く。ここから雌牛越えまでは、40分足らずだ。牛の絵がついた、古いトタン板の道標がある、雌牛越えにつく頃には、雲底も上がってきて、青空が顔を出し始めた。この、はっきりした天候回復の兆しに、Kさんもやっとルート変更に同意してくれた。ここから牧牛稜までは、急な登りが700mほど続く。

昔からよく使われてきたルートは、マーカーもしっかりしていて、迷うことはなく、険しいが、その分高度を稼ぐのも早い。海抜1000mあたりで森林限界を抜け、低い潅木帯の中に切り開かれたルートをあえぎながら登っていくと、徐々に視界が開けてくる。主稜線の1500m級の山々は、まだかなり残っている雲に隠されて見えないが、1350mほどの牧牛稜には雲がかかっていない。潅木帯を抜けた1200mほどの尾根上で、昼食。それから一頑張りして、午後一時半ごろに、牧牛稜の分岐点に到着した。

急な登りを終えて、一安心。黒さくらんぼの残りで成功を祝う。Kさんは携帯電話を取り出し、ご主人のBさんと話をしている。こんな人里離れたところが通話範囲なのが不思議だ。(もっと里に近いところで通じないことが良くあるのに) ここからは、平らでだだっ広い稜線上を、景色を楽しみながらのんびり歩く。まだ雲底が低く、タラルア山地北部主稜線の豪快で荒々しい山体が見えないのが残念だ。この辺りは、昔、冒険的な開拓農民が牛の放牧を試みた結果、野生化した牛の群れが徘徊していたため、牛に因んだ地名が多いのだそうだ。(証拠写真も残っている)確かに稜線上は平らで、ちょっと下ると草原状になっていて、放牧が出来ないこともなさそうだが、標高1000mを越えるここに、下界から、どうやって牛を移動させたのだろうか。
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山岳展望が好きな私は、雲底が上がって、展望が見る見る良くなっていく好条件の中、頻繁に立ち止まって写真を取る。プケキノ(Pukekino:悪い丘という意味)と呼ばれる平らなピークの先に、ガクっと深く切れ込んだ鞍部がある。そこへの下りルートを見つけるのは、視界が悪いととても大変だと、Kさんが前々から言っていた。その下りルートに差し掛かり、その険しさにちょっと唖然とする。足場を慎重に選び、岩角・草の根をつかみながら下っていくと、Kさんが立ち止まって、「人がいるわよ」という。見上げると、鞍部の向こう側の丘の上に、人影がたたずんでこちらの様子を見ているよう。「反対方向に向かう登山者かな。それなら鞍部まで下ってきて下からルートを教えてくれると良いんだけど」と希望的に思っても、その白いシャツを着た人影は一向に動く様子がない。横に、小さく見えるのはどうも犬を連れているようだ。
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何とか悪所を下りきり、鞍部から短いが急な登りで、牧牛稜の最後のピーク、プケロア(Pukeroa:長い丘という意味)に着くと、空もきれいに晴れ上がってきた。見晴らしの良いところで最後の休憩。縦走の成功を祝い、お互いの写真を取り合う。(プライバシーのためというより、変に映ってしまったので、顔なしで失礼。背景の景色のほうを見てね) 

今日の宿泊地、牧牛稜小屋に向かって歩き出すと、向こうにさっき見えた白いTシャツの人が立って手を振っている。近づいていくと、いきなり「ワワワワワン!」とやられた。精悍な顔つきの牧羊犬が、ちょっと神経質そうに我々をにらんでいる。飼い主と挨拶を交わしていると、安心したのか近づいて頭を撫でさせてくれる。犬好きのK さんは、早速なでまくり攻撃。飼い主の人は、今朝空が晴れてきたのを見て、手早く小屋どまりの装備をまとめて登ってきたのだそうだ。犬の話や、Kさんが以前ここで、霧のため小屋が見つからずに苦労したことなどを話しながら、小屋に到着。雌牛沢小屋と同じ、小さなつくりだが、ワイララパ平原を一望の下に見渡せる、景色の素晴らしい小屋だ。e0056912_9525524.jpg

もう5時過ぎだが、NZの夏の日は長い。まず湯を沸かしてお茶を入れ一休み。そのあと、Kさんの指導で Mountain Radio(山岳無線)のアンテナの設置。夕食作りはK さんの番で、メニューはマカロニ・チーズだ。西日が当たる小屋の前に座って夕食と景色を楽しむ。犬のジェスも、他人の私たちに慣れてきて、すっかりリラックスしている様子がかわいい。e0056912_1095456.jpg

定時連絡の山岳天気予報によると、今夜から天気が崩れて来るそうだ。縦走を今日に変更して本当に良かった。明日は川沿いを下り、裂け目谷をさかのぼって、今日の出発点、雌牛越えに戻るという長い行程だ。まだ明るいうちに早めに就寝。

縦走中の展望・パノラマ写真集

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赤線  今日のルート
黄緑丸 休憩地点 
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by mimi_s_mum | 2006-06-14 10:22 | 山行報告




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