二日目は天気に恵まれ、視界良好で、稜線上からの眺めを思う存分楽しめた。山岳無線の定時交信によると、天気は下り坂に向かうということだ。 夕刻から少し風が出てきていた。ベッドに入って眠りに落ちたが、夜中に、強風と小屋の屋根、壁を打つ雨音で目が覚めた。かぜはますます強くなってきて、小屋全体が揺れ、生来眠りの浅い私は、全く眠れない。タラルア山地は強風で有名なところで、私も、山行中強風に悩まされた経験は数知れない。縦走中に、この風にあわなかったのは、非常に幸運なことなのだ。夜中に起きてトイレへ行くのも大変な作業だ。幸い、風が少し穏やかになった時をねらって行けたが、トイレのなかにいるとき、突風でトイレの建物が倒れたらどうしようか、と、本当に心配した。 朝になっても強風は止まない。起きて、湯を沸かし初め、トイレに行くために合羽を着て小屋の外に出ると、何か黒と白のものが足元に来てハアハア言っている。昨日出会った犬のジェスかと一瞬思ったが、色が違うし、ジェスはまだ小屋の中で寝ているはずだ。すぐ後ろに、主人の、がっしりした若者が現れた。下の小屋に泊まっていて、今朝早く、運動がてらに軽装で登ってきたそうだ。簡単に挨拶を交わし、私はトイレへ、若者と犬は小屋のドアへと向かう。数秒して、凄い犬の唸り泣き声と、若者の怒鳴り声が響いてきたが、こちらはトイレのほうが優先課題だ。 小屋に戻ってみると、あの黒白犬は、外に締め出されて風雨の中しょんぼりと座っていた。中では、若者とKさんが立ち話をしていて、ジェスが神経質そうに睨んでいる。朝の転寝を楽しんでいたら、よそ犬に家宅侵入されたので、怒っているようだ。若者は、天気回復の望みが全くないので、すぐに下山していった。われわれは、朝食と荷造り。ジェスは、主人が朝寝を決め込んでいるのが不満で、起こそうとするのだが、逆に「っるせいな!あっち行けっ」と怒られてしょぼんとしている。試しに 'Jess, come. Jess, sit.' と言ってみると、何と私の命令に、いそいそと従うではないか。何て可愛い、訓練の行き届いた犬なんだろう。 ジェスの主人がようやく起き出して来た頃、我々のほうは荷造り完了。雨は止んできているようだが、相変わらずの強風の中を出発だ。この小屋は、稜線から100mほど下った、風下側にあるのだが、それでも風は相当凄い。微妙に風向きをかえながら襲ってくる突風だ。身体の軽い私は、吹き飛ばされないように風の吹いてくる方向に体を倒して踏ん張りながら、一歩一歩進もうとすると、突然風向きが変わり、よろめいたり、倒れたりすること数回。やっと、風を防いでくれる潅木帯へたどり着き、一息ついて、合羽を脱ぐ。 これからは、急な下りを一時間ちょっとで、ルアマハンガ川河畔に降りつき、そこから10分ほどで、橋を渡って雄叫び牡鹿山荘(Roaring Stag Lodge)へ到着。ここは、最近出来たばかりの、新しいモダンなデザインの山小屋だ。以前の小屋は、地元の鹿猟師会の有志が中心となって建てたのだが、登山口から近く入りやすいので、一般登山者や学校のグループに人気があった。今回の改築で、宿泊人数を増やしたのだ。 ここで休憩して10時のおやつ。これから、ルアマハンガ川を、4キロほど下流の裂け目谷まで川沿いに下り、裂け目谷沿いの登山道を登って、雌牛越えを越え、一泊目に留まった雌牛小屋まで戻るという計画だ。裂け目谷登山道までは、道が付いてないところをルート探しとなる。'Tararua Footprints' というガイドブックによると、橋を渡ったら右岸通しに段丘上の森林・河原歩きで渡渉は不要ということだが、小屋の記録ノートを見ると、水かさが上がっているときにに反対ルートを来た人が、胸までの渡渉と、深いところを避けるための高巻きで大変時間がかかったとある。どちらが本当だろうか。 10時過ぎに出発、橋を渡り返して、来た道を下流に向かって歩き出すと、ちょうどジェスとご主人が下山してくるところだった。二人とも(じゃなくて、この一人と一匹)タラルアの山が好きそうだから、またいつかどこか出会うことだろう。(今思い出したのだが、実はこのジェスとご主人とは、コーン小屋のペンキ塗りをしたときに一度顔を合わせていたのだ。)さて、探検開始だ。 今日はここまで。この続きは次の記事に載せます。請うご期待。
by mimi_s_mum
| 2006-06-21 14:04
| 山行報告
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Created by mimi_s_mum
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